2020年 神戸大学 化学 一問一答と解説
【問題分析】
2020年の神戸大学の化学の問題は、リード文が短く、すぐに解答に取り掛かれる問題が多いです。
しかしながら、試験時間60分に対して問題が多いため、時間がかかりそうな問題は後回しにして、短時間でできる問題で効率よく点数を積み重ねていく必要があるように思います。
Ⅲの有機化学の構造決定の問題は条件設定が複雑で、E、F、G、Hの構造決定まで時間がかかりますが、それが分かれば問2~6まで一気に解答できるため、Ⅲは優先してやるべきかどうか迷うところです。
しかし、相当化学が得意でないと、試験中にそこまで考えるのは難しいでしょう。
Ⅲ 問7の有機化合物の構造を答える問題はかなり難しいです。考えすぎて時間を取られると損です。
ⅢよりⅣのアミノ酸の問題の方が1問ずつ着実に解答でき、取り組みやすいと思います。
2020年の神戸大学の化学の入試問題から一問一答を作ってみました。
【解答上のポイント】
与えられた図は、物質の状態変化を横軸が温度、縦軸がエネルギーで表してあり、問題集などでよくみられる横軸が時間、縦軸が温度の図とは異なっています。
問1~4はリード文に関しての問題、問5、6はリード文とはあまり関係がない問題です。読むとすぐにわかりますが、素早い意識の切り替えが必要です。
【一問一答】
Q-01.
問1
容器内に分子結晶が入っている。圧力を一定に保った容器に温度T1の状態から一定の速度で熱量を加えていくと、物質に加えたエネルギーと温度の相関に関する下図の結果が得られた。
AB間、BC間、CD間、DE間の各領域はそれぞれどのような状態か答えよ。
A-01.
AB間: 固体
BC間: 固体と液体
CD間: 液体
DE間: 液体と気体
Q-02.
問5
圧力を制御できる容器内に氷またはドライアイスを入れて加熱し、それぞれの融点を調べた。氷およびドライアイスの融点は、容器内の圧力を高くしていくと、それぞれどのようになるか答えなさい。
A-02.
氷: 下がる
ドライアイス: 上がる
解説
水の状態図では融解曲線の傾きが負のため、圧力を上げれば上げるほど融点は下がります。
一方、CO2の状態図では融解曲線は右側を向いています。したがって圧力を上げれば融点は上がります。
----↓ Ⅱ ----
【解答上のポイント】
Ⅱは電気分解の問題です。
難易度は高くなく標準的な問題です。全体的に取り組みやすい問題です。
問5の記述問題はどこまで詳しく書くか迷うところです。
【一問一答】
Q-03.
問1
銅の電解精錬において、銅以外の金属不純物を含む粗銅板を「①」極に、薄い純銅板を「②」極として使用する。
①、②に入る適切な用語を答えなさい。
A-03.
粗銅板: 陽極
薄い純銅板: 陰極
解説
用語に注意。正極、負極ではない。
Q-04.
問2
電気分解の際に粗銅板で起こる銅の化学変化を表す反応式を書きなさい。
A-04.
Cu → Cu2+ + 2e-
Q-05.
問3
粗銅板に不純物としてAg、Fe、Ni、Pb、Znが含まれていた。
硫酸酸性硫酸銅(Ⅱ)水溶液を電解液として電気分解を行ったとき、電解精錬後に粗銅板の下にできた沈殿に含まれる元素として適切なものを2つ選べ。
またその理由を説明しなさい。
A-05.
Ag: Cuと比べてイオン化傾向が低いから
Pb: PbSO4の溶解度が極めて低いから(PbSO4が不溶性であるため)
Q-06.
問5
粗銅板を陽極、純銅を陰極、電解液に硫酸酸性硫酸銅(Ⅱ)水溶液を用いた電気分解において、電解液中のCu2+の総量は{増加する・減少する・変化しない}のいずれか答えなさい。また理由を説明しなさい。
A-06.
減少する
粗銅板に流れる酸化電流はCu以外の不純物元素の酸化反応にも利用されることから、純銅板上で還元される(析出する)Cuの量が、粗銅板で酸化される(溶解する)Cuの量より多くなるため。
----↓ Ⅲ ----
【解答上のポイント】
Ⅲは有機化合物の構造決定の問題です。
リード文が長く意外に時間がかかる印象です。
この問題はA、B、C、Dを加水分解してできるF、G、H、Iがわかれば問2~4まで一気に解答できます。
F、G、H、Iは炭素4個からなる異性体です。異性体として考えられる候補は出てくるのですが、問題文に書かれている条件を見て、F、G、H、Iのどれに対応するか調べなければなりません。
【一問一答】
Q-07.
問1
ナトリウムフェノキシドと二酸化炭素を加熱・加圧して反応させた後、希硫酸で処理して生じる化合物は何か構造式で答えよ。
A-07.
サリチル酸
----↓ Ⅳ ----
【解答上のポイント】
Ⅳはアミノ酸の問題です。
前半はアミノ酸の知識問題、後半は反応速度などの計算問題です。
最後の問7は基質濃度と反応速度の関係をグラフで書く問題で、解答に手間取りそうです。
【一問一答】
Q-08.
問1
カルボキシ基は「ア」性、アミノ基は「イ」性を示す官能基である。そのため、アミノ酸は中性水溶液中では電離し、分子内に正と負の両電荷をもつ「ウ」イオンとなる。
「ア」、「イ」、「ウ」に入る適切な語句を答えなさい。
A-08.
カルボキシ基は酸性、アミノ基は塩基性を示す官能基である。そのため、アミノ酸は中性水溶液中では電離し、分子内に正と負の両電荷をもつ双性(両性)イオンとなる。
解説
アミノ酸の基本問題です。
Q-09.
問1
タンパク質は多数のアミノ酸がアミド結合によって縮合した鎖状高分子であり、この時のアミド結合を特に「エ」結合という。
「エ」に入る適切な語句を答えなさい。
A-09.
ペプチド
解説
アミノ酸の基本問題です。
Q-10.
問3
アミノ基をもつタンパク質をR'-NH2とし、このタンパク質と無水酢酸との反応を反応式で示しなさい。ここでR'-以外は化合物を構造式で表すこと。
A-10.