化学の勉強でまず一番初めにすることは教科書を読むことです。
入試問題は基本的には学校で使っている教科書の中から出題されます。
あともう一つ有用なのが教科書と一緒に配られる傍用問題集(副教材)です。
化学の傍用問題集でよく知られているのがセミナー化学ですが、それ以外でも別にかまいません。
傍用問題集は解答が生徒に配られないことがあり、その場合は自習するには残念です。
その場合でも本文に解答が載っている例題、例えばセミナー化学の場合は基本例題、をするだけで十分です。
大学の化学の入試問題は実は教科書と傍用問題集でほとんど解答できます。
難関大学を目指す人にありがちですが、教科書や傍用問題集をおろそかにしていきなり難易度の高い問題集に取り組もうとする人がいます。
これは典型的な失敗パターンです。時間がかかるだけで、効率よく学力を向上させることができません。
大学の入試で良い点を取るためには教科書と傍用問題集の内容をしっかり理解して覚えることが大切です。
確かに旧帝大などでは教科書などには載っていないような問題が出題されることはありますが、そのような問題は対策のしようがありません。
一般的な化学というと高校で習う範囲以外にも膨大な範囲があり、それらすべてを網羅して万全な体制で臨むことは不可能です。
大学入試の化学で成績上位となるためには、まず第一に教科書、傍用問題集に載っている問題は取りこぼさず確実に得点することです。
化学の成績が良くない人は教科書の内容を覚えていないのです。
教科書や傍用問題集だけで成績上位になれるというのは信じられないかもしれませんが、別の言い方をするとそれすらできていない人が多いということです。
化学の問題は知識問題と計算問題に分けることができます。
計算問題を苦手にしている人も多いと思いますが、そのような方はまず初めに知識問題の対策をすると化学の成績は見違えるように向上します。
但し記憶する量はかなり多いです。共通テストでさえ計算問題と合わせて8割以上得点しようとすると相当な分量の知識を正確に覚えておく必要があります。
覚える項目が膨大であっても入試で覚えておくべき定番の範囲は決まっていますので、頑張って覚えた暁には安定して得点できるという安心感が得られます。
次に具体的な勉強方法について解説します。
ここで述べた方法は化学に限らず、他の科目でも使えますので参考にして下さい。
先ほど述べたように教科書と傍用問題集を併用しながら学習を進めます。
教科書が重要と書きましたが、教科書の問題点としては①具体的にどこを覚えたらいいのか分からない、
②問題としてどのように問われるかわからない、ということがあげられます。
そこで問題集を活用します。問題集の第一の候補は傍用問題集ですが、別冊解答が配られていないと勉強できませんのでその場合は別の問題集を使うとよいと思います。
特別に難易度の高いものではなく、標準レベルで定評なものの中から自分に合いそうなものを選べばよいです。
私はコンパクトに全範囲を網羅している化学重要問題集が好きですが、化学重要問題集は解答の解説が少ないと感じる人もいるようなので、
その場合は解説が多い別の問題集を選べばよいと思います。
使用する問題集は一冊で十分です。難関校を目指す人は難易度の低いものから、非常に難易度の高いものへ何冊も問題集をステップアップしていく必要があると
考えている方がいるかもしれませんが、化学にそこまで時間を使うのは無駄だと思います。問題集を一冊仕上げた後は、共通テストや志望校の過去問に取り組むのが良いです。
教科書、傍用問題集、問題集一冊を使用して勉強しますが、その時の勉強の仕方が非常に重要です。
それらに載っているものをできるだけたくさん覚えていきます。知識の量と成績は比例すると考えてよいです。例えば出てくる化合物名、色、反応式、現象などです。
化学は覚えることが多いので語呂合わせを多用して覚えます。
記憶力が良い人なら別ですが、普通の人ならそうでもしないととても覚えておけないです。
勉強する過程で覚えるべき項目や自分が気になった事項をノートに記載していくと、後々非常に効率よく復習できます。
問題集主体でそれを何度も復習して行くのも一つの手ですが、より精度を高めるためには
重要事項や分からなかったことを書きだすノートは効果的です。
もしパソコンが得意ならパワーポイントやgoogleスライドのような文字と図を自由に混在できるソフトを使用して、重要事項ノートをつくるのが良いです。
これらのソフトを使うと図も切り貼りしてまとめ資料を作ることができたり、資料のページ数が多くなっても検索機能を使えばすぐに目的の項目を見つけることができます。
資料を作っていくうちに項目が増えても簡単にページを追加したり、並べ替え足りするのが容易です。
しかし、パソコンに不慣れであったり、パソコンを持っていなくても、紙のノートで資料をつくるのでも十分です。
パソコンで資料を作るのは、もし可能であれば、ということです。
勉強していくうちにいろいろな項目をどんどん書き足して、重要事項ノートのページが増えていくと楽しくなると思います。
そして成績もどんどんあがります。
重要事項等を記載したノートは単に項目を書きだしても良いですがQ&A方式にしておくとより覚える項目が明確になり覚えやすいです。
答えの部分に、答えだけでなく参考となるようなメモを加えていくと知識も広がると思います。
問題集の問題を解きながらどのように書きだすかの例を以下に記します。
次の問題は化学重要問題集2021の第1問目の一部で穴埋め問題です。
1.<物質の構成>
自然界は約90種類の元素からできている。太陽系を作る元素は水素が最も多く,
これに次ぐ「(ア)」をあわせると質量で約99%にもなる。地球の乾燥した空気は,
体積組成が78%の「(イ)」,21%の「(ウ)」,約1%の「(エ)」などからなる。・・・・・・
これから作ったQ&Aは下の通りです。
問題
1.太陽系をつくる元素で多いものを2つ答えよ。
2.地球の乾燥した空気の構成成分を多いものから3つ答えよ。
答え
1.水素、ヘリウム (合わせて99%)
(化学重要問題集 2021 1)
2.窒素78%、酸素21%、アルゴン1%
(化学重要問題集 2021 1)
例えば1.に関しては穴埋め問題ではヘリウムしか問われていませんが、入試問題では一番多い水素が聞かれるかもしれませんので、Q&Aでは水素とヘリウムを答える形式にしています。
このようにQ&Aを作るときは問題をそっくりそのまま移すのではなく、出題対象となっていなかった周辺部分でも必要と思われる項目も入れていきます。
次は私が実際に作っているノートの紹介です。
参考として下記にQ&Aとして作ったノートの一例を示します。
「・同素体とは」等が質問です。
それに対して「・同種の元素の単体で、構造が異なるために性質の異なる物質どうし。」等、先頭に「・」をつけたのが答えです。
この答えに対して、同素体を持つものとして「S、C、O、P」、語呂として「語呂: スコップ」、どこに載っていたかについて「(化学重要問題集 2021 3)」を答え以外に参考情報として記載しています。
作成に余り時間を取らないようにするため、メモ書きに近いものとなっています。
これは他人に見せるためのものではないので、本人が誤解しない程度に簡単に書いておけばよいです。
もちろんこの資料は作成して終わりではなく、折に触れて復習に使用します。
また無理にQ&A形式にしなくても状況に応じて柔軟に作成していけばよいです。
参考として一つだけ紹介したい化学の教材が、「化学基礎早わかり 一問一答」と「化学早わかり 一問一答」です。
この問題集はすべての問題が一問一答形式になっています。この問題集の特徴は入試の知識問題のカバー率が非常に高いことです。
しかし、この問題集から知識を増やしていくことはお勧めしません。ひたすら一問一答が並んでいるため、覚えにくいと思います。
知識は先ほど述べたように教科書、傍用問題集、標準的な問題集から増やしていく方が覚えやすいと思います。
「化学基礎早わかり 一問一答」と「化学早わかり 一問一答」の使い方としては知識がたまった後に抜けがないかの確認で使うとよいと思います。
例えば理系の国立大学を受ける人は、共通テストの英語、数学、国語、社会1科目、理科2科目、二次試験の英語、数学、理科2科目、(国語)の対策をしなければなりません。
共通テストの化学と2次試験の化学は異なるものではありませんが、共通テストの化学は何問かは非常に特徴的な問題が出題され、解答する練習をしておかないと対処が困難な問題も出題されます。
すなわち、2次試験の化学の中に共通テストの化学が完全に包含されているというよりは、少しはみ出している部分があるので、共通テスト対策も必要です。
勉強すべき科目を6科目、高校3年間を大ざっぱに30か月とすると、1科目に割り当てられる期間は5か月です。
(もちろん一つの教科だけ集中して勉強する人はいないと思いますが、時間のイメージをつかむための計算です)
しかし、化学よりも英語や数学の方がはるかに勉強すべき内容が多いので均等に割った5か月を化学の勉強にあてるのは長すぎます。
数学はⅠA、ⅡB、ⅢCとすると本当は3教科と数えるべきかもしれません。
そうやって考えると化学にかけることができる時間は長くてもせいぜい4か月程度です。
たった4か月で化学の知識が0から入試レベルまで完成させなければなりません。
中高一貫校で数学や英語を中学生の時から計画的に先取りしていれば時間的に非常に有利にはなります。公立高校に通う人はより効率の良い勉強をしなければなりません。
難関大学を受ける人は少しでも点数を積み重ねていく必要があるので、勉強時間を確保するため国語や社会の勉強時間を省くというのも得策ではありません。
勉強期間を4か月と考えると何種類も問題集をやっている時間はないことがわかるでしょ。教科書、傍用問題集以外に使う問題集は1冊にして、
それを充実させるのが現実的です。
複数の問題集をやるとなると、復習は適当にして次々に問題を解くことになります。
どんな問題集でも結局は似たような問題が収録されているので、精密に復習していかなくても力技でゆるく復習していることになり、少しは成績が上がるとは思いますが、非常に効率が悪いです。
それよりも一冊の問題集を丹念に使い、完成度を高める方がよほど効率よく学力を向上させることができます。
大学入試の問題の難易度を大ざっぱに俯瞰すると次のようになります。東大、京大は標準的な問題も出題されますが、非常に難しい問題も出題されます。
おおよそ半分の問題は標準的な問題なので、確実に得点し、残りの難しい問題をどれだけ解けるか、という感じです。
他の旧帝大では東大、京大ほどではないが、それなりに難しい問題が出題されます。
こちらも同じで標準的な問題を確実に得点することにより、合格が見えてきます。
それに対して、旧帝大以外の大学で出題される問題はほぼ100%教科書、傍用問題集、標準的な問題集に載っているものばかりです。
これは見たことがないなという問題はほとんど出題されません。
したがって、基礎力の充実が非常に重要です。
なんとなく知っているとか、見たことあるとか、解説を見ればわかるとかのレベルと、
試験中に答案用紙に正確に解答を書いていくことができるレベルは大きく違います。
基本事項を何度も復習して実力をつける必要があります。ここでいう基本事項とは入試で出題される可能性のある定番の問題という意味です。
それはすなわち、教科書と傍用問題集に載っている内容のことです。