第一回共通一次試験の化学の第1問目
現在の国立、公立大学の試験は、受験生が共通の問題を解く第一次試験と各大学で実施される第二次試験で行われます。
このシステムは1979年から行われています。
一番初めの第一次試験は大学共通第1次学力試験、通称「共通一次試験」とよばれていました。開始時点では5教科で各200点満点、総合1000点満点でした。
第一回目は1979年1月13日、14日に行われました。実施された日程は現在の一次試験とほぼ同じです。理科は13日に行われました。
共通一次試験 第一回目の化学Ⅰの第一問目を紹介します。
Ⅰ 問1 ⓐ~ⓓを、融点の高いものから順に並べたものはどれか。
ⓐ塩化ナトリウム ⓑナフタレン ⓒ鉛 ⓓ酸化アルミニウム
①a>b>c>d ②d>a>c>b ③d>c>a>b ④c>a>d>b ⑤a>d>b>c
ⓐ塩化ナトリウム ⓑナフタレン ⓒ鉛 ⓓ酸化アルミニウム
①a>b>c>d ②d>a>c>b ③d>c>a>b ④c>a>d>b ⑤a>d>b>c
融点なので固体が溶けて液体になる時の温度が高いものから順に並べよというものです。
この中でナフタレンはナフタレン分子がファンデルワールス力で結合した分子結晶なので、一番融点が低いことが想像されます。
塩化ナトリウムと酸化アルミニウムはイオン結晶、鉛は金属結晶です。
イオン結晶と金属結晶は一般的にどちらが融点が高いとはいえません。物質によります。特に金属結晶は、室温で液体の水銀(Hg)からもっとも融点が高いタングステン(W)約3400℃と融点の幅が非常に大きいです。
この問題の鉛ははんだの材料でもあることから金属の中でも比較的融点が低いと予想されるので、塩化ナトリウムと酸化アルミニウムより融点は低いと考えられます。
次に塩化ナトリウムと酸化アルミニウムはどちらが融点が高いかですが、塩化ナトリウムは1価のイオンのNa+とCl-の結合、一方酸化アルミニウムは3価のイオンのAl3+と2価のO2-の結合です。イオン結晶は価数が大きいイオンの方が結合する力が強いので酸化アルミニウムの方が融点は高くなります。
したがって本問題の答えは②となります。
融点に関する問題は2次試験でもよく出題されます。例えば2018年の東京大学では次のような問題が出題されました。
MgO、CaO、BaOの結晶のうち、最も融点の高いものを推定し、理由を示せ。
この問題の結晶はすべてイオン結晶で尚且つすべて2価の陽イオンと陰イオンの結晶です。
しかしイオン半径はMg2+ < Ca2+ < Ba2+です。イオン半径が小さいほど陽イオンと陰イオンの結合はつよくなるので最も融点が高いのはMgOとなります。
<終わり>