プラスチックのリサイクルに関する出題
ここ最近の入試にプラスチックのリサイクルに関する問題が出題されています。
例えば、
2023年 名古屋大学 問題Ⅲ 問2 設問(7)
2023年 神戸大学 Ⅳ 問5
エコの時代を反映していますね。このような問題は私が受験生の時にはありませんでした。
受験生にとっては厄介なのかもしれませんが、化学は物理と違って時代が変わると出題される問題も変化していくので面白いです。
私が受験生時代になかった問題としては、プラスチックのリサイクルの他に、燃料電池、DNAなどがあります。
さて、プラスチックのリサイクルには3種類あります。
それは、①マテリアルリサイクル、②ケミカルリサイクル、③サーマルリサイクル、です。
①マテリアルリサイクルはさらに水平リサイクルとカスケードサイクルに分けられます。
①マテリアルリサイクル
・水平リサイクル
水平リサイクルとは、廃棄物となった使用済み製品を再原料化し、再び同一の製品を製造することです。例としてはPETボトルからPETボトル、アルミ缶からアルミ缶へのリサイクルなどです。
・カスケードサイクル
カスケード(cascade)は、英語で「階段状の滝」という意味です。カスケードリサイクルは原料を元の製品から品質を落としながら多段階的に再利用することです。
例としては、コピー用紙 → 新聞紙 → 段ボールへと品質の低下を許容できるものへと段階的に利用していくことがあります。
②ケミカルリサイクル
廃棄物に化学的な処理を施し、他の物質に転換してから再利用することです。
例としてはPETボトルを化学的に分解してPET樹脂の原料または中間原料を得たのち、精製したものを再び重合してPET樹脂にするものです。
③サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、汚れや異素材との複合などのために技術的にリサイクルが困難なものを焼却し、その際に得られる熱エネルギーを利用するリサイクルのことです。
表 リサイクル法のまとめ
①マテリアルリサイクル | マテリアル(物)からマテリアル(物)へと再利用(リサイクル)すること | ・水平リサイクル
リサイクル前と後で用途を変えない方法。例: 回収したアルミ缶から新しいアルミ缶、ペットボトルからペットボトルを作る ・カスケードリサイクル 元の製品よりも価値の低い物にリサイクルすること。例: コピー用紙 → 新聞紙 → 段ボール |
②ケミカルリサイクル | 廃棄物に化学的な処理を施し、他の物質に転換してから再利用すること 例: プラスチックを分解してモノマー化し、再利用する | |
③サーマルリサイクル | 廃棄物を燃やすときに発生する熱エネルギーで再利用すること |
ところで、名古屋大学と神戸大学のリサイクルに関する出題はどのような問題だったのでしょうか。
(g)熱硬化性樹脂のリサイクルは、主にマテリアルリサイクルによって行われる。
〇か×か
答えは×です。
熱硬化性樹脂は溶かすことができないので、元と同じものへとリサイクルするマテリアルリサイクルは少なくとも使えません。
熱硬化性樹脂はケミカルリサイクルやサーマルリサイクルされます。
この他にも、様々な(d)プラスチックリサイクル技術の開発が行われている。
下線部(d)について、プラスチックのリサイクル手法の名前を2つ答えなさい。
初めの方にまとめた、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの内、2つを答えればよいです。
大学が発表した解答では、ケミカルリサイクル、マテリアルリサイクルとなっていました。
面白いことに、両方の大学とも一番最後の問題で出題されました。
リサイクルは一番最後に付け足される問題という位置づけなのでしょうか。
<終わり>