2021年神戸大学「志」特別選抜の化学に関する問題で出題ミス

神戸大は2023年10月13日に、2021年10月に実施した「志」特別入試で、理系の1次選抜の問題文に誤りがあったと発表しました。

2022(令和4)年度「志」特別選抜第1次選抜の問題で「理系 総合問題II」で出題された化学に関する問題での出題ミスです。

問題を解こうとした高校生が見つけたそうです。

出題ミスがあったのは次の問題です。


第1問 I Ia (1) ③

周期律表で3族から11族元素は( カ )元素と呼ばれ,その中で常温常圧下,単体が液体であるものは,( キ )である。


出題者側は( カ )に遷移、( キ )に水銀(Hg)の答えを想定していました。

しかし、水銀(Hg)は12族のため問題文と合わない、というミスです。細かいとはいえ間違いは間違いですね。

この問題に関しては、入試において常温常圧で液体の単体として覚えておかなければならないのが臭素(Br2水銀(Hg)です。

また遷移元素の範囲ですが、3族から11族元素とする時代もあれば、3族から12族元素とする時代もあり、混乱します。2022年に学習指導要領が改訂されてからは3族から12族元素が遷移元素となりました。この問題が出題された時は、遷移元素を3族から11族元素とした最後の年だったことになります。

これはs軌道が閉殻となっていることを共通とするか、d軌道が閉殻となっていないことを共通とするかの違いです。

ちなみに難関大学ではK殻、L殻、M殻ではなくs、p、d軌道が出題されることもあります。(例えば、名古屋大学 2023年 問題II)

この試験はおそらく受験者が少なく、見た人があまり多くなかったため、間違いに気づくのが2年後になったのではないかと推測されます。

この問題で後もう一つ気づくことは、周期表ではなく周期表と記載されている点です。周期律表も間違いではありません。私も長らく周期律表と表現していました。しかし、周期表と表現される方が圧倒的に多いです。

周期表と周期律表について、誰がどちらを使うかよくわかりません。古い人は周期律表という場合があるのでしょうか。

入試問題のミスは毎年、あちこちの大学で発生しています。

入試問題は通常その大学の先生が持ち回りで作成します。入試問題の作成が大学の先生の仕事の中で一番いやだということを聞いたことがあります。

出題ミスがあると大問題に発展する可能性があるので、できることなら関わりたくないのでしょうね。

大学の先生は高校生が勉強することはあまり詳しくないので、入試問題の作成担当になると高校生はどんなことを学んでいて、どんな問題が出題されているのか、から勉強しなければなりません。

加えて、研究が本業の大学の先生にとっては、いくら頑張って入試問題を作成したところで業績とはならないのです。

なかにはよく工夫された問題もあり、感心することがありますが、大学の先生は本当に大変だと思います。

<終わり>