2022年名古屋大学化学の有機化学で出題された難問
2022年名古屋大学化学の有機化学の問題ではキュバンという化合物の構造式を答える問題が出題されました。
高校では習わないので正解率は低かったと思います。何人ぐらいが正解できたのでしょうか。
問題を要約すると、
「分子式がC8H8で表され、二重結合や三重結合をもたない。さてどんな化合物か構造式を答えなさい。」
というものでした。
例えば、Cが8個からなり、直鎖で二重結合や三重結合をもたない飽和の構造であれば、分子式はC8H18となります。
したがって、分子式がC8H8だと飽和に比べてHの数がかなり少ないです。
二重結合や三重結合がなく、水素の数が飽和に比べて少ないなら、環状構造かと思いたいところですが、単純に環状構造にするだけならC8H16となり、まだまだ水素の数は多いです。
この問題に正解するためには3次元の構造を考える必要があります。
正解は下記のような構造です。この構造だと確かに分子式はC8H8となります。
これはキュバンという化合物です。
いわれてみればそうかと思いますが、キュバンという化合物を知らなければ試験時間中にこの構造を思いつくのは困難なのではないでしょうか。
尚、キュバンは構造上不安定と考えられていましたが、1964年にフィリップ・イートンらのグループが合成に成功しました。合成してみると実際はかなり安定な化合物であることが分かりました。
2022年には東京大学のグループが、水素の代わりに全ての頂点にフッ素原子が結合した「全フッ素化キュバン」の合成に成功したことを発表しました。
キュバンが発表されてからかなりの年数がたったのちに合成に成功しています。
水素をフッ素で置き換えただけの化合物ですが、その合成はとても難しかったのでしょうね。
<終わり>